生育ステージ予測を活用して、防除適期を見極める!

JA本渡五和 TAC山下清弥さん

お客様プロフィール

紹介する機能 生育ステージ予測
地域 熊本県
栽培作物 水稲

課題:適期防除の判断がむずかしい

熊本県のJA本渡五和では、従来、地元青壮年部による水稲の共同防除が動噴で実施されていましたが、労力がかかるうえに防除時期のずれが生じ、出穂時期に合わせた適期作業が出来ず水稲農家からクレームがきていました。軽労化・省力化・防除時期の最適化を目指し、令和3年度からラジコンヘリによる水稲共同防除を始めました。

ただし、ラジコンヘリの共同防除実施時期の判断については課題がありました。JA管内には平坦部と山間部が存在し、地区によって水稲の生育が異なります。また、「早期米は気象条件によって出穂期がずれやすい」と同JAのTAC山下清弥さんは感じています。加えて、近年は紋枯病の多発も問題になっています。

多くの場合、水稲や大豆の防除適期は、地域の栽培暦や防除暦の中で決められています。例えば、水稲であれば、出穂期の前後に基幹防除が行われ、大豆であれば、紫斑病や子実害虫の基幹防除が莢伸長期~子実肥大期に実施されます。適期防除には、これら生育ステージの把握が非常に重要です。

一方、毎年のように異常気象が発生する近年の環境下においては、急激な温度上昇や記録的な長雨などにより、作物の生育は平年とは大きく異なった様相を呈します。つまり、従来の慣行に従って、平年値をもとに〇月□日に防除を実施するという計画を立ててしまうと、異常気象によって作物の生育にずれが生じ、それにともなって防除適期を逃す恐れがあります。効率的な農業経営が求められる一方で、予測や判断が難しい環境のもとで農業生産を営まざるを得ない状況であると言えます。

ザルビオだからできる高精度な生育予測

データ駆動型農業、農業分野におけるデジタルトランスフォーメーションの一つとして、作物の生育を予測する取組みが広がっています。

ザルビオフィールドマネージャー(以下、ザルビオFM)は、水稲・大豆でサービスを開始しており、その機能の1つとして生育予測機能を備えています。

ザルビオFMの最大の特徴は、その生育予測にAIを利用している点です。AI学習によって予測精度を高めるためには多くのデータが必要ですが、実際、十分なデータが集まっているコシヒカリやヒノヒカリでは、令和3年度の各品種の生育予測を高精度に実施できました。

例えば、茨城県つくば普及センターは、5月1日移植のコシヒカリの出穂期を7月22~25日と発表していたところ、ザルビオFMは、つくばでの5月1日移植のコシヒカリの出穂期を7月24日と予測しました(図1)。

図1.5月1日移植(上段)、5月15日移植(下段)コシヒカリの出穂期頃の予測画面
生育ステージは数字で順番に表記されているが、カーソルを合わすと日本語が表示される(茨城県つくば市の例)
なぜこのようなことが可能かというと、ザルビオFMには品種ごとの生育データが入力されているとともに、12kmメッシュの気象データを取得しているためです(令和5年3月までに1kmメッシュ気象データに改善予定)。

これにより、ザルビオFM上に登録された圃場によく合った気象データを使って生育予測を精度よく実施できます。

作物の生育を高精度に予測できると、生育ステージに合わせて実施する追肥、防除、水管理、収穫などの作業を最適なタイミングで計画できます。

それだけでなく生育予測機能の活用によって、生育調査のための圃場見回りや作業実施の判断に必要な時間の削減、適期作業による効果の最大化が期待できます。

生育ステージ予測機能を使って最適な散布計画を立案

生産者の労働力不足の解決と適期防除のためにラジコンヘリによる水稲共同防除を発案したJA本渡五和の山下さんは、圃場管理の効率化にZ-GIS(JA全農が提供する営農管理システム)を、適期防除のためにザルビオFMを活用しました。

農家の労力軽減、防除時期の最適化等をめざしラジコンヘリによる水稲共同防除を始めた
ラジコンヘリの共同防除を実施するにあたって、まず、山下さんは、ラジコンヘリの共同防除の散布対象圃場の管理のためにZ-GISを使って、圃場を見える化しました。

ラジコンヘリのベテランオペレーターにもZ-GISで作成した地図を共有し、「全国各地で散布を行っているが、こんなに分かりやすく圃場を地図管理しているのは初めて見た」と言わしめたほどです。

さらに、ラジコンヘリ防除の散布時期を最適化するためにザルビオFMの予測機能を活用しました。2021年、山下氏はザルビオFMを使って平坦部圃場のコシヒカリの出穂期を7月12日、山間部圃場のコシヒカリの出穂期を7月15日と予測しました。ラジコンヘリ散布をスケジュールするにあたって、散布作業の半月前には日取りを決める必要がありますが、半月前の予測結果と実際の出穂期は合っていました。

山下さんは、「7月12日からラジコンヘリ防除を計画し、平坦部から山間部へと順番に散布する計画を立てることができた」と予測精度に満足しています。

ザルビオの圃場情報画面
現在、広範囲に紋枯れ病が発生している状況にあることや、年によってはいもち病が多発することから、山下さんは病害予測に期待を寄せています。

来年、ザルビオFMがどのような病害予測結果をもたらしてくれるか、農家にとってどのようにメリットになるか、ザルビオFMの導入による費用対効果を検証していきたいと意気込んでいます。

生産者にザルビオを使った圃場管理の提案をする山下さん