100キロ離れた圃場を手元で見える化。
0.5haの小規模水稲栽培でもザルビオで黒字化

長谷川 麻理子 さん
長谷川麻理子さん

お客様プロフィール

紹介する機能 地力マップ、生育マップ
地域 秋田県
栽培作物 水稲、ネギ、ブロッコリーなど
栽培面積 1.0ha(米:0.5ha、ネギをメインとする野菜:0.5ha)
従業員 ご本人のみ

介護職から転身、2拠点の圃場を一手に担う女性農家

ーー現在の営農のスタイルを伺えますか?

実家は戦前から代々農家ですが、私は一度家を出て介護福祉士として勤めた後、更地から新規就農して自営農家になりました。
基本は1人で農作業をやっていますが、ビジネスパートナーとして近所の女性農家と協力し、野菜メインの私と米メインの彼女とで時期によって労働力を補い合っています。
私は農業を手伝いながら育ったことに加え、介護職で体の使い方の原理を学んできたので、コツを身に付けて体を上手に使えば農作業は女性でも十分にできると手応えを感じています。

ーー就農のきっかけは何だったのでしょうか。

約15年前、30代で特定疾患の難病を発症したんです。病気と付き合っていくためには通院が必要で、自営業のほうが融通が利くこともあり、「原点に帰って畑をやろう」と思いました。
秋田県の就農準備講座「未来農業のフロンティア育成研修」で2年間にわたり野菜作りを学び、新規就農して現在で6年目。農業の合間に介護の仕事もしています。

ーー栽培中の作物について教えてください。

自宅のある秋田市内の0.5haの圃場で、秋田県の推奨作物である秋田美人ネギをメインに作っています。他にも直売向けにナス、キュウリ、トマト、オクラなども栽培しています。
3年前からは、秋田市から約100キロ離れた由利本荘市にある家族所有の農地で水稲栽培も開始。こちらも0.5haほどで、遠いですが通いで作業しています。
もともと、あきたこまちと蕎麦を作っていた父の体調が理由で全て蕎麦に転換するとなった時に、ならば私がと米作りを引き継ぎました。
トラクターで田植えをする長谷川さん

ーー2拠点を管理し、かつ100キロ先まで通うのは楽ではなさそうですね。

高速道路を使って片道1時間20分の距離を、1年目はおよそ週1回の頻度で通いました。張り切って積載車を借りて田植え機を運んだら経費がかさみ、10俵の反収があったものの結果は赤字。規模とコストのバランスを理解していなかったんです。
頑張りすぎを反省して2年目からは通う頻度を2〜4週に1回に減らしたら、今度は田んぼの状況を細かく把握できなくなり、出穂も見られずじまい。それでも8、9俵は採れて赤字は相殺されましたが、課題が残りました。

遠く見えない圃場の状況…「見える化」で不安を払拭

圃場が遠いことで、具体的にどんな課題が生じていたのでしょうか?

現地の状況が見えないので、田んぼに水が入っているか、逆に水がかけ流しになっていないかと常に不安だらけでした。
「2週間後に行けばいいはず」と目算していても、実際に行って「雑草が増えすぎた、どうしよう」と慌てることも。訪れて状況を把握してから必要資材を買いに行くなど非効率でした。
ビジネスパートナーと一緒に行う作業もあるので、もっと効率的に計画できたらと切実に思っていました。

ーーどのように課題解決の方法を探りましたか?

作業の見える化と田んぼの黒字化を図ろうと考え、ザルビオに興味を持ったんです。JAの全国大会でザルビオの存在は知っていたので、1年間無料で機能を試したうえで有料会員に移行しました。(※有料機能の無料サービスは終了済み)
特に、GPSを使ったシステムで圃場の状態を上空からチェックできる点が魅力でしたね。とはいえ、写真のような実画像で詳細が見られるわけではないので不安がありつつも、地力マップと生育マップの見方を理解してからは「遠くの圃場を手元で見える化できる」という点がまさに私の求めるものだと思いました。
管理画面を操作する長谷川さん

ーーザルビオの導入により農作業はどう変化したでしょうか。

秋田市で農作業をしながら由利本荘市の田んぼの様子が見られるので、「今は行かなくて大丈夫」と分かって計画に裏付けと安心が生まれました。
ザルビオから追肥や防除の通知がもらえるので、それに沿って作業スケジュールを組めるようになったことも大きいです。例えば、30分で終わる薬散の日に合わせて草刈りや追肥を予定できるようになり、効率が格段に上がりました。

ーー実際に田んぼを訪れる回数は変わりましたか?

まとめて作業できるようになったことで平均月1回に減りました。当初の4分の1の回数です。安心感が生まれた上に作業の精度と効率はアップしたので、一石二鳥どころか三鳥にもなっていますね。

信頼性の高い情報がコスト削減・品質向上にプラス

ーーザルビオの導入は、営農コストにどう影響しているでしょうか。

基肥に関しては、従来は全面散布でしたが、ザルビオの地力マップのおかげで、山際だけ・水口だけなど地力が低いポイントに絞って入れるように変わりました。今まで1袋使っていたものが半袋で済んでいる状態です。
また、ピンポイントで適期防除ができるようになったので高い農薬のコストが抑えられ、農薬散布が2回に減ったので人的コストの面でも安心です。それだけでもザルビオの利用コストを回収できたなと(笑)。結果的に減農薬にもなっています。
ザルビオアプリの地力マップ画面

ーーコスト削減のメリットが出ているということですね。米の質はいかがでしたか?

稲の高さが均一だったので施肥ムラなく育っていると分かり、月1回の世話で十分な効果を実感できました。
うちの田んぼは猛暑の影響を受けにくい山の上にあり、湧水を使っているせいもあると思いますが、JAへの出荷分は一等米、かつアミロース指数はAでした。過保護に育てなくても一等米が作れる自信が付きましたし、2023年は無事に黒字化しました。

ーーザルビオのデータの信頼性についてはいかがですか?

データの精度に不安を感じたことはないですね。ザルビオから「今は成熟期ですよ」といった通知が来ると、「そうか、もうすぐ行くから待っててな」という気持ちです。
実は去年、周りの農家さんと米の刈り取り時期が3週間ほど違ったんです。ほとんどの人が高温障害や胴割れの懸念から早刈りをして、未成熟の青米が入ったため二等米が多かったと聞いています。
私はザルビオに従ってギリギリまで待ってベストな状態で収穫できたので、信じてよかったと思いました。

小規模でも採算性を確保。農業のイメージが変わっていく

ーー女性農家、新規就農者という目線ではザルビオをどう捉えていますか?

今まで「米農家は3町歩(約3ha)以下だと経費倒れする」といわれてきました。私はコンバインや田植え機を持たずに圃場を管理していますが、0.5haでも採算が採れているのはザルビオがあるから。稲作には広い土地と男性の体力が必須という従来のイメージを、ザルビオが変えつつあります。
機械を使わない女性1人が担う作付面積は小さくても、就農する女性が増えれば日本の農業の担い手不足の光明になるはず。最初は私の就農に前向きでなかった父も、今は私が作った米を食べていますよ。
スマホでザルビオを活用する様子

ーーザルビオの機能で改善してほしい点はありますか?

圃場のリアルタイム画像が見られたら理想的ですね。あとは遠隔操作で水管理が可能になったら、農家の働き方はさらに大きく変わるでしょう。
ザルビオは登録のある作物の種類にのみ対応しているので、いつかネギが登録されたら使ってみたいです。

ーー最後に、長谷川さんが目指す農業の姿を教えてください。

一番は、楽しく農業を続けたいということです。ザルビオを使うと作業効率が上がるので時間にも気持ちにも余裕ができ、生活の質が上がります。こうしたツールを使う側も順応し、学んでいきたいですね。