収量・一等米比率・作業効率が
トリプルアップ。
生育ステージ予測と生育マップが
叶えた農業DX

田森 喜治さん
田森 喜治さん

お客様プロフィール

紹介する機能 生育ステージ予測、生育マップ
地域 静岡県
栽培作物 水稲
栽培面積 10ha
従業員 ご本人のみ

会社員と兼業農家の2足のわらじから2018年に専業農家へ転身

ーー専業農家になられて5年目とのことですが、就農の経緯についてお聞かせください。

元々は自動車整備の業界で会社員をしながら、実家が所有していた30aほどの農地で兼業農家を営んでいました。徐々に近隣から農地を任されるようになり2haまで面積が拡大したために、専業農家として本腰を入れることにしました。

ーー現在は10haまで拡大されていると伺いました。

はい。
2022年は8.1haだったのですが、そこからさらに増えて約10haを管理しています。

ーーどちらに出荷されているのでしょうか?

JA大井川へは特別栽培の高付加価値米を中心に出荷しています。今年は静岡県農林研究所が開発した酒米「令和誉富士」が結果良かったので、栽培割合を増やしています。

他にも、企業への出荷や、業務用米として高校の食堂への納品、直売所への出荷も行っています。

取引単価を上げていくため、食味をしっかり確保しながら収量も取っていくことをテーマに毎年品種選定を行っています。
田森さんの圃場の様子

ーー現在栽培されているのはどんな品種ですか?

「コシヒカリ」のほか、晩生で姿も味もよい「きぬむすめ」、中生で高温耐性と収量性に優れる「にじのきらめき」、冷めてもおいしく熟期がやや遅い「ミルキークィーン」、水稲高温耐性が高いのにツヤが特徴の「にこまる」など、高温をうまく避け食味がよい品種を選んでいます。

リスク回避も考えて、高温耐性と食味と収量のバランスが良い品種を毎年試しながら選んでいます。

10haを1人で管理。要になるのはザルビオとZ-GISを活用した作業計画

ーー多様な品種を栽培してらっしゃいますが、普段の営農はどのように行われていますか?

まだ専業になって5年目で大規模な設備なども揃っていませんから、普段はほぼ一人で全ての作業をしています。田植えと稲刈りの時期だけ手伝いをお願いしています。

農地の集約化が進んだので、データと機械での効率化を進めて1人で管理ができるように整備を進めてきました。

ーーその過程で導入されたのがザルビオだったのですね。

そうです。元々Z-GISを使って圃場の管理をしていたところ、全農さんからのおすすめで当時出始めだったザルビオを2020年から使い始めました。

ーーザルビオはどのように活用いただいていますか?

ザルビオの生育ステージ予測のデータとZ-GISの圃場データを連携させて、エクセル上で作業計画を行っています。
ザルビオ上でそれぞれの圃場の品種と田植え時期を指定すると、出穂の時期や稲刈りの時期を予測したデータを返してくれるんですよ。
このデータを活用して、田植えを始める前から全体の作業計画を決めています。
実は2024年春からの作付け計画はすでに立てていて(2023年12月現在)、1年分の作業計画を効率的に行えています。
作業計画を行っているエクセル表

異常気象が課題のなか、ザルビオの生育ステージ予測が判断基準に

ーー生育ステージ予測の予測精度はいかがでしょうか。

最初に全農さんのセミナーで実証データを見た時、出穂の予測がすごく正確だなと感じました。そこからですね、ザルビオに高い信頼を置き始めたのは。

JAさんの営農暦はありますが、作業適期に関しては「中旬」とか「下旬」といった大まかな指定です。その点、ザルビオを使った方が「何日に出穂期になりますよ」と教えてくれるので、遥かに作業計画がたてやすいです。

ーー今年の営農の中でデータの正確さを実感したタイミングはありましたか?

今年は特に高温だったので、一発肥料が速く溶けてしまい、葉の色が薄くなってしまいました。そのため、出穂が何日になるかを見て穂肥のタイミングを判断するのですが、実際見回った生育状況と生育ステージ予測の出穂の予想はほぼ合っていました。

あとは最近ではカメムシがかなり飛来するので、これも出穂の前後に防除が必須です。その作業のタイミングを判断するのにも、生育ステージ予測が役に立ちました。

適期の刈取りを見極めできたことで、収量は20%アップ・ほぼ全てが一等米に!

トラクターはヤンマーの直進アシスト機能付き

ーー稲刈りの時期を決めるのにも、ザルビオが役に立ったそうですね。

近年、刈取りのタイミングは判断が本当に難しくなっています。そろそろ刈り取れるかなと思った時に稲穂剥いてみても、中はまだ登熟が進んでいなくて刈り取れない状態が続きました。
いつ刈ればいいのか迷っていましたが、結局、ザルビオの予測がほぼ正しかったです。

これまで刈取り適期は出穂からの積算温度での判断とされていましたが、今は全く当てにならなくなっています。
最後の段階では今年は手動水分計で圃場の水分量を測って判断しましたが、ザルビオの生育ステージ予測はもはや判断に欠かせません。

ーー難しい条件の中でしたが、品質・収量はどう変わったのでしょうか?

今年は条件が厳しい中でも、一等米比率をかなり高く保つ事ができたと感じています。周りの農家が苦戦している中、私はほとんどが一等米で評価をいただきました。単価でいくと、2000円程度は違いが出たと思います。

また、食味にこだわった結果、JA大井川美米(うまい)グランプリでは最高金賞を受賞することができました。

収量に関しても、今年は昨年と比較して5%アップ、ザルビオを使い始めてからの3年トータルで20%ほど収量が増えています。

生育マップを事前にチェックして圃場の見回りが格段に効率化

生育マップで確認した生育ムラを元に追肥を行う

ーー生育マップも活用されているそうですが、どのような使い方をされているのでしょうか?

生育マップをチェックして、追肥の判断をしています。手作業で撒いているのですが、生育が悪い場所にはたくさん肥料を与えて、生育が良い場所は控えめにしています。
あとは先日、中干しの時期に圃場の水が不足している場所があったのですが、ザルビオの生育マップを見て異常に気づきました。見に行って見ると葉っぱの色がそこだけ変わっていたので、急いで手を打ちました。

ーーザルビオを使うことで見回りの負担は減りましたか?

問題のあるところが的確にピンポイントで分かるようになったので、同じ手数でも効率が良くなりましたね。
以前は10haの圃場を順に回っていましたが、今は「ここなんかおかしいな」というところを優先して見ることができます。それが品質の向上にも繋がっています。

ザルビオを活用してGAP認証やカーボンクレジット取得
有機栽培も視野に

ーー今後の更なる活用方法として、お考えのことはあるのでしょうか?

今後、静岡のGAP認証を取ろうと考えています。先日、県の職員さんにザルビオとZ-GISを使った栽培履歴のデータを見てもらったのですが、記録が1番難しいところのデータが既にあるので対応しやすそうだと言っていただきました。

また、ブロードキャスターによる有機肥料の散布に目を向けてもいいかな、と考えています。
J-クレジットの認証取得を念頭に、ザルビオで最高分げつ期を把握して中干し期間をコントロール・記録できたら、コスト的にも有利になってきそうです。
このあたりのデータの使いこなしが今後の課題ですね。