水稲に可変施肥を導入し、施肥量を抑制

JAやつしろ / 株式会社アグリ日奈久
可変施肥マップ

お客様プロフィール

紹介する機能 可変施肥マップ
地域 熊本県
栽培作物 水稲
栽培面積・圃場数 160ha

ザルビオは使える営農ツール

JAやつしろは熊本県の南部に位置し、水稲をはじめ晩白柚、い草、露地野菜、施設園芸など多彩な品目が栽培される日本でも屈指の農業が盛んな地域です。中でも水稲生産は広大な八代海が育んだ干拓地を中心に生産されており、生産量は県内トップクラスを誇っています。また、TACトップランナーズJAでもあり、常日頃からTACによる手厚い担い手対応を行っています。

JAやつしろがザルビオを活用しようと思ったきっかけはJAと法人の関係強化の一つのツールとしてでした。導入のきっかけを作った中央総合営農センターの上村係長は「TACが訪問する中で担い手からの要望が高度化・多様化しており、JAからの提示できるものが減りつつあった。そういった状況の中で話題のスマート農業の分野でJAから率先して提案できる具体的なツールだと思い、取り組んでみようと思った」と語ります。
㈱アグリ日奈久の白石代表(左)とJAやつしろの上村係長(右)
管内の日奈久地区を中心に、水稲・麦類・牧草・露地野菜などの土地利用型農業を年間通じて約160haの面積で営む「(株)アグリ日奈久」にTACが提案を行い、令和3年度作から多収米である「とよめき」で、まずはザルビオの使用感を実感してもらうこととしました。

実際に使うなかで(株)アグリ日奈久の白石代表は「生育マップの情報と実際の生育が精度高く一致していた」と語り、ザルビオへの期待感をあらわにしてくれました。

そこで令和4年度からは、さらに踏み込んだ取り組みとしてザルビオを活用した可変施肥の実施をJAから提案し、(株)アグリ日奈久で実施する運びとなりました。

適正施肥と施肥量抑制をねらい、可変施肥を実施

ザルビオはリモートセンシングの結果をもとに5段階の可変施肥マップを誰でも簡単に作成することができます。

そのマップを用いた可変施肥により、圃場の中での生育ムラを無くした適正施肥を行うこと、ならびに施肥量の抑制を行うことを今回のねらいとしました。
施肥量は基準となるゾーン3と比較し最大±10%の可変とし、代表地点で生育ならびに収量・品質を確認することとしました。

また、施肥マップ作製の基準となる2つのマップでそれぞれ生育ならびに収量品質がどのように変化するかを確認するため、【1】作付け開始直前の地力マップから施肥マップを作製した「地力マップ区」と、【2】前年度の幼穂形成期の生育マップから施肥マップを作製した「生育マップ区」の2つの区画を設置しました。
ザルビオで作成した施肥マップ

ザルビオで明らかになった可変施肥の効果

可変施肥の結果、地力マップ区では0.4kg/反、生育マップ区は5.2㎏/反の施肥量を抑制することができました。これを水稲面積(約86ha)で試算すると最大4,472㎏の施肥量を抑制できることがわかりました。

また、生育ムラの状況を確認するために幼穂形成期(BBCH34)のタイミングで、ドローンを用いて生育状況のセンシングを分析画像(NDVI)、人口衛星(RGB)で行いました。その結果、人口衛星(RGB)では明らかな差は確認できませんでしたが、分析画像(NDVI)では慣行栽培の区画と比較して、可変施肥を実施した圃場の方が均一な生育になっていることが確認できました。また、地力マップ区と生育マップ区を比較すると地力マップ区の方が大きな値を示すことが見て取れました。
撮影したセンシング画像(2022/7/27)

若い担い手にとって、ザルビオは必須アイテム

今回の可変施肥試験によりザルビオの活用が農業経営に大きく貢献できる可能性が示されました。白石代表も「農業経営のカギはいかにコストを削減できるか。ザルビオはそれに大きく貢献してくれる」と効果の高さを期待しています。

また、「これからの若い担い手が農業を営むためにスマート農業は導入しなければならない技術の一つ。伝統的な農法も大事だが、ザルビオなどのスマート農業を活用して省力化をしていきたい」と経営の未来を見据えたザルビオへの期待を示してくれました。

JAやつしろでは今回の(株)アグリ日奈久での試験結果をもとに農家所得の向上に向けた提案としてだけでなく、化学肥料20%削減を掲げるみどりの食料システム戦略への対策も行い、担い手の関係性の向上にザルビオを活用していく方針です。
㈱アグリ日奈久のみなさまと
取り組みに協力いただいたJAグループ熊本の方々